日本が石油大国になるかも?

日本が石油大国になるかも?

微細藻類は生物の命創造の恩人

微細藻類は生物の命創造の恩人 今、日本では官民、大学がこぞって湖や海で繁殖する微小な藻類から石油に代わるエネルギーを製造しようと開発を競っています。
しかも、遠い将来の夢物語ではなく、数年後に実用化される見込みがあります。
原油を海外に依存している日本が、産油国となって原油輸出国になる可能性も夢ではありません。
微小な藻類は、10万種類もいるとされていますが、その中で石油に代わる代替エネルギーが抽出できる藻類として研究されているのは、ユーグレナ、オーランチオキトリウム、ボツリオコッカス、アオコ、バイノスなどがあります。

これらの微小な藻類は、数十億年前に姿を地球上に現していますが、この頃の地球は酸素が少なく二酸化炭素の濃度の濃い時期で、他の生物が生存できる環境ではありませんでした。
この環境下で微小な藻類=微細藻類は光合成を行い、酸素を空気中に放出し、他の生物が生存できる酸素濃度に徐々にしてきたという壮大な万物の命創造の歴史を作り上げてきました。
あらゆる生物にとって、この微細藻類は生命の起源の源を作ってくれた命創造の恩人と言うことができます。

微細藻類は、このように二酸化炭素の濃い時代を経て生き延びたからか、微細藻類の二酸化炭素を吸収する能力は、とうもろこしなどの植物に比べると100倍以上にもなるほどの大きな吸収力を持っています。
折しも、地球温暖化で進む地球環境の悪化・破壊の原因が二酸化炭素の増加と言われ、世界的に二酸化炭素の削減が叫ばれています。

微細藻類の驚くべき代替エネルギー生産能力

微細藻類によるバイオ燃料の生産量は、とうもろこしやヤシから作る場合の数十倍あり、世界の総需要の石油燃料を日本の面積より少し広い程度の微細藻類を培養する池があれば生産できるという計算が成り立つと言われています。日本だけの需要を賄う、あるいは少しそれに輸出する位の量を生産するには、数十分の1の広さがあれば十分となります。

日本のエネルギーの自給率は4%ほどしかなく、ほとんど自給できていませんが、一気に自給自足できるようになり、上手くいけばエネルギー輸出国になる可能性もあります。


微細藻類からの代替エネルギー抽出研究状況

ユーグレナからジェット燃料用の油の抽出を研究中。
JXHD(株)と東京大学からできたベンチャー企業ユーグレナ(株)がジェット燃料用の油を抽出することを研究中で、2018年までの実用化を目指しています。

アオコからガソリンと同等の代替エネルギー採取に成功。
財団法人電力中央研究所が、アオコから油を抽出し、それがガソリンと同等の発熱量を持っていることが確認できています。

シュードコリシスチス、ボツリオコッカスから軽油と同等の代替エネルギー採取を研究中。
シュードコリシスチスからは、自動車用品メーカーのデンソーと慶応大学が共同で、ディーゼルエンジンで使用できる軽油と同等の成分の油を抽出すべく研究中です。
ボツリオコッカスから、同じく軽油と同等成分の油を抽出すべく筑波大学が研究中で、出光興産やキッコーマンなどの民間企業40社と大学や研究機関などが集まって「藻類産業創成コンソーシアム」という組織を立ち上げて官民で推進に動いています。
また、東京ガスと東京大学も同じボツリオコッカスから、軽油と同等成分の油を抽出すべく研究中です。

微細藻類からバイオガスを製造研究中。
微細藻類から油を抽出した後の残渣をメタン発酵させてバイオガスを製造し、東京ガスは、このバイオガスを都市ガスに混ぜて利用することを検討中です。

榎本藻からジェット燃料用の油の抽出を研究中。榎本藻とは、ボツリオコッカスの一種で神戸大学の榎本教授が発見した微細藻で、ボツリオコッカスに比べ増殖するスピードが早く、1か月後の総量は榎本藻の10万倍ほどになると言われています。この微細藻から(株)IHIは重油に相当する油を抽出し、ジェット燃料として2014年からサンプル出荷し、2016年以降に事業化する計画となっています。


微細藻類から生産可能な石油代替エネルギーの魅力

微細藻類から生産可能な石油代替エネルギーの魅力 微細藻類からの生産可能な石油代替エネルギーの魅力は、バイオ燃料の場合、バイオ燃料が増加すると食糧や食糧を栽培する耕地とのトレードオフが生じます。
つまり、食糧不足、環境破壊が懸念されるなか、バイオ燃料を生産するために食糧となるとうもろこしが食糧として利用できない、あるいは食糧となるとうもろこしを栽培するための耕地が少なくなる上に、緑豊かな森林が少なくなると言う問題を抱え、燃やすと環境破壊を促進する二酸化炭素を排出します。

一方、原子力エネルギーや太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーは、二酸化炭素を排出しませんが、原子力エネルギーは、2011年に起きた東日本大震災に見られるように安全性が完全に担保されていないという大きな問題があります。
また、再生可能エネルギーは、クリーンで今後期待されるエネルギーですが、気候などの自然に電力発電量が左右されて安定供給に問題があります。

これらの問題がないのが、微細藻類から作る石油代替エネルギーです。
微細藻類の栽培には、とうもろこしなどの食物を栽培する耕地は不要で、かつ微細藻類を栽培する段階で、燃焼時に発生する二酸化炭素を吸収する光化学反応を行うので二酸化炭素の排出量は増加しません。
食糧問題にも、環境破壊にも優しいエネルギーとなります。